差異化の罠

 夏の終わりにアルプスの麓で開かれた、ビジネスコンテストに出掛けてきました。スタートアップされた方々がプレゼンを終えて、アクセラレーター陣から質問を投げかける場面があるのですが、気になるポイントがありました。

 

 その汎用なアイデアに近似したプランでは、競合が手を出してきたときどのように対応できるのか。競合優位な差異化ポイントを聞かせてくださいという、定番の質問ですが、スタートアップ最中にあるビジネスオーナーに問い掛けるのは、本質を外していないかという自問を帰りの特急車中で考えてきたのですが、拙い回答を書いてみたい。

 

 

 

 

 そもそもビジネスモデルの新規性とはどのようなコトでしょうか。

新規性の最頂点にある「発明」や「発見」などは、世界中の人がまったく気が付いていない事象を指していますので、このような状態を要求している訳ではありません。では、新規性とは何か。

 

 特許や意匠など知的所有権フィールドでの新規性は、公知の事実や機能を新しい組み合わせで有用な効力を発揮している状態を指しています。つまりスタートアップしたビジネスが生み出している新しい価値が、どの様な効力を持っているかということに成ります。決定的な差異化の力は、主体となる個人という存在です。絶対に真似できないのですから、そのオーナーさんの考え方や行動している状態は、人が違う競合には絶対真似できない要素です。

 

 1人のオーナーが、その起業場所で、仲間たちと、立ち上げたビジネスは既に差異化されている状態です。

ビジネスオーナーの立ち位置である、供給側の差異化を聞いたのではなく、来て買ってくださるお客様は、他のお客様とはどの様に違っているか。顧客を選んでいるかというコトを聞いているのだと思います。商品がABCの三つあれば、三通りのお客様が選ばれている状態です。

 

 お客様が、どうしても欲しいという探求の状態で、ビジネス供給者が善いものですよ訴求する構造があって顧客とのコミュニケーションが成り立ちます。接客の妙は相対しているコトで新しい発見、「アハ体験」が生まれなければ購入意欲は刺激できません。ここがネット通販と最大の相違点です。

 

 最初の問い掛けに、利便性や機能性の差異化を説明しがちですが、「へえ~そうなんだ」とか「あっそれだ」といった、心が動き出す状態を招いていくために、豊富な知識や行動によって蓄えられた人としての魅力が「差異化」の原点だと改めて確信したしだいです。

 

 コンテストのアセッターとして、一歩踏み込んだ質問力が欲しいな~、と意を新たにした車中でした。