ビジネスセミナーや商品企画の現場で語られる「ペルソナ」とは、「ビジネスの対象となるお客様のイメージを創るために、仮想の人物像を思い浮かべるコト」と定義されています。皆さんのビジネス現場では、どのようにして具体化していますか。
現役時代に多くの商品企画を立案してきましたが、決定的な作法は思い当たりません。こう自虐的に告白してしまうと無いコトを肯定したように見えますが、しかしペルソナ像を組織で共感しておかなければ大きなリスクが残ってしまいます。狙いを定めた市場をセグメント毎に分割して理解しよとする事例は、販売戦略として普及していると思います。ここからスタートしましょう。
日本を代表するクルマ産業にあっても販売チャネルを分けて、それぞれ商材を開発し送り出しています。商材にあった顧客を見つけ出し販売する訳ですが、実は大変難しいアプローチでもあります。多くの販社では一度買って頂いた顧客リストを起点に、点検や修理や清掃といったように次の購入までコバンザメのようにまとわり付く商法をとっています。しかしクリーンエネルギー戦略やハイブリッド駆動型のクルマなど登場するに及んで、前記の顧客リストを隈なく声掛けすることで、新しいコンセプト商材をお買い上げしてくれるものでしょうか。
「この3000ccエンジンのクルマは大きな馬力もあって加速性が良く、しかも大きなボディーで居住性も優れステータスとしても一目置かれるデザインです」旧来は自家用車という占有価値を目的として、それこそ商材の性能や機能をたくさん並べて汗だくでプレゼンしていた風景が思い浮かびます。若者のクルマ離れという状況がありますが、こうしたセールストークでは若い人の気持ちは動きません。もちろん環境に良いという新しめのクルマも購入する意欲とまでは響かないでしょう。
若い人を思い浮かべてみてください。毎週日曜日クルマで湘南のサーフィンに出掛けるコトを繰り返しているペルソナを想定してみましょう。1週間は168時間あります。都内から湘南まで往復4時間掛かるとして利用時間率は2.4%です。都内の駐車場が月決め2万円、湘南の駐車料金2千円×5回、クルマのローンが毎月5千円、ガソリン代3千円×5回、保険代1万円、整備諸費用5千円だとすると月額6万5千円です。賢い人はこの費用を払わないでしょうし、そもそもムダ・ムリ・ムラのオンパレードです。湘南に住むかサーフショップの預かりサービスを利用した方が、仲間つくりも相まってサーフィンの楽しみが増すのではないでしょうか。
しかしクルマを売りたいのです。そうした湘南に住みたいペルソナにクルマを売るにはどうしたら良いのでしょうか。明らかなコトは自家用車として性能や機能を押して占有欲を掻き立てても、効果的なセールスはできないと理解すべきです。クルマが主役ではなく湘南に住む若者のライフスタイルが主役であることを理解し、そのスタイルの行く先を創造してみることが大切ではないでしょうか。若者受けとしてお台場でタイヤスモークが出続ける600馬力のドリフトカーでは無いと思うのですが…。
図表はセグメントを切った時の参考イメージを掲載しています。大切なコトはお客様のボリュームイメージを示した分布図のように、極端な両サイドに対してお客様のアクティビティは右手も左手も延びてくるというコトです。